スイス雪・雪崩研究所(SLF)は、2025/26年の冬を3月30日までまとめた「冬の振り返り(Winterrückblick 2025/26)」で、雪崩に人が巻き込まれた事故が171件、巻き込まれた人が244人だったと発表した。過去10年の同じ時期(3月末まで)の平均は127件・182人で、事故も人数もそれを上回った。3月末までの死者は15人で、平均(14人)とほぼ同じだった。欧州雪崩警報機関(EAWS)の国別集計では、スイスの2025/26シーズンの死者は18人になっている。SLF は、確定した数を、9月30日の年度末に冬の報告書(Winterbericht)でまとめるとしていて、それまでは数が変わりうるとしている。

冬の初めに、雪の底が弱くなった

SLF によると、この冬は11月末から12月初めに早く雪が降ったあと、1月まで乾いた晴天が続いた。雪はほとんど降らず、年が明けるころには多くの場所で積雪がとても少なかった。

積雪が薄く、雪の表面と地面との温度差が大きいと、雪の粒は角ばった大きな結晶(こしもざらめ雪、しもざらめ雪)に変わっていく。こうした粒どうしはほとんどくっつかないので、上に雪が積もると、長く残る弱い層(持続型弱層)になる。SLF はこの状態を「古い雪(Altschnee)」の雪崩問題と呼んでいる。

1月の第2週から2月中旬にかけて、何回か、たいていは少しずつ雪が降り、この弱い層を覆った。このため「古い雪」の問題は1月と2月にとくに強く、アルプス全体に広がった。いちばん影響を受けたのは、ローヌ川とライン川を結ぶ線より南、主にヴァレー(ヴァリス)州、ティチーノ州、グラウビュンデン州だった。グラウビュンデン州とエンガディン地方では、1月から3月にかけて、地域によっては6週間にわたって雪崩危険度レベル3(Considerable)の予報が出続けた。

事故は多く、死者は平均並み

SLF は、積雪の底が弱い冬は事故が多くなりやすいと説明している。「古い雪」の問題は、専門家でも現場で見分けるのが難しい。また、積雪の深い層で破断が起きると、雪崩は危険なほど大きくなることが多い。

3月30日までの数は次のとおりである。

項目2025/26年冬(3月末まで)過去10年の平均(3月末まで)
人が巻き込まれた事故171件127件
巻き込まれた人244人182人
完全に埋まった人37人31人
亡くなった人15人(13件の事故)14人

出典:SLF「Winterrückblick 2025/26」(集計の締め日 2026年3月30日)から転記。完全に埋まった人の平均(31人)は、原文では「過去10年の平均」とだけ書かれている。

死亡事故の多くは、弱い「古い雪」の層から雪崩が始まったもので、大きな雪崩になったことが多かった。1月10日から2月22日までは、人が巻き込まれた雪崩が毎日記録された。事故はローヌ川とライン川を結ぶ線より南で、北よりはっきり多かった。

2月中旬の大雪で、危険度は最高のレベル5に

2月中旬には、数回に分けて大量の雪が降った。2月10〜13日には、下ヴァレー地方の西端と北部で100〜150cmの新雪が積もった。2月15〜18日にも、下ヴァレー地方の西端と、アルプス北側の稜線沿いで90〜140cmの新雪が測られた。2月17日には、雪崩危険度は5段階で最も高いレベル5(Very high)に達した。レベル5が出たのは、2021年1月28日以来だった。2月18〜22日の3回目の降雪で、北側ではさらに1mの新雪が積もった。

この期間、雪崩は3回鉄道に及んだ。2月16日には、ヴァレー州ゴッペンシュタインで、スノーシェッド(線路を雪崩から守る覆い)を越えて線路まで達した雪崩に列車が突っ込み、5人がけがをした。マッター谷の鉄道でも2回雪崩が線路に及んだが、けが人は出なかった。それ以外に、交通路(道路・鉄道)や集落で大きな被害は記録されていない。

欧州全体では

EAWS は毎年10月1日から雪崩の死者を数えている。2025/26シーズンの欧州の死者は計151人で、国別ではイタリア40人、フランス35人、オーストリア33人、スイス18人などだった(2026年10月26日に閲覧)。EAWS は、欧州では雪崩で毎年平均100人が亡くなっているとしている。この数は加盟機関とその協力先からの報告にもとづくもので、EAWS は抜けや誤りの連絡を受け付けている。

確定値は冬の報告書で

SLF の事故の一覧は10月1日に2026/27年度へ切り替わり、2025/26年度の数はいまサイトの一覧では見られない。SLF は、確定した事故の数を冬の報告書(Winterbericht)で出すとしているが、2026年10月26日の時点で、2025/26年の報告書は SLF のサイトで見つからなかった。この記事の数は、3月末までの振り返りと EAWS の集計にもとづくもので、確定値ではない。

日本から読むときの視点

積雪の少ない時期に晴れて冷え込む日が続き、雪の底が弱くなり、その上に雪が積もる。この流れは、日本の山でも少雪の年の初冬に見られることがある。スイスの冬は、雪が少ない年に事故が多くなりうること、そして「古い雪」の問題は経験のある人でも見分けにくいことを、数で示している。

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