私たちが向き合う3つの社会課題
気候変動により、日本の雪国は未曾有の危機に直面しています。
特に山岳地域では、これまでの常識が通用しない新たな課題が次々と顕在化しています。
私たちは、科学的アプローチと革新的な発想で、これらの課題解決に挑んでいます。
1
深刻化する水資源不足
白馬大雪渓、2年連続の登山道閉鎖が示す危機
【現状】
- 2023年、2024年と2年連続で白馬大雪渓の登山道が閉鎖
- 夏季の雪渓が完全消失(2024年10月)
- 年間を通じた積雪量が過去100年で減少傾向
左:白馬大雪渓2015年10月26日
右:白馬大雪渓が消失2024年10月26日
雪不足がもたらす連鎖的影響
農業への打撃
- 春から夏(4〜8月)の灌漑期に深刻な水不足
- 2025年夏、稲が枯れ、野菜が不作となる事態が発生
- 農業用水の確保が地域の死活問題に
生活用水への影響
- 夏季の渇水リスクが年々上昇
- 水源の多様化が急務に
観光産業の打撃
- 登山道閉鎖による山小屋や関係機関への経済損失
なぜ雪が減っているのか
気温上昇
→
雪温の上昇、降雪が雨に変化
→
積雪期間の短縮
→
雪解けの早期化
若林隆三先生の言葉通り、「雪は天然の白いダム」です。
この天然のダムが機能不全に陥ることは、地域社会の存続に関わる問題なのです。
2
予測不能な雪崩リスクの増大
従来の経験則が通用しない新たな雪崩
【新たな雪崩パターン】
- 気温の乱高下による不安定な積雪層形成
- 異常高温による全層雪崩の早期発生
変化する雪崩の特徴
発生時期の変化
- 従来:春季に全層雪崩、湿雪雪崩の発生
- 現在:暖冬により12月〜条件が整えばいつでも発生するように
スキー場内でのリスク増大
- 管理区域内での予期せぬ雪崩発生
- ゲレンデコース内での全層雪崩の発生
予測の困難化
- 積雪内部の複雑な温度勾配
- 雨と雪が交互に降る特異な気象パターン
- 過去のデータが参考にならない事例の増加
3
雪崩管理技術の継承危機
失われゆく専門知識と経験
【現状】
- 雪崩管理専門家が少数
- 後継者不在の地域:日本全域
なぜ技術継承が進まないのか
人材不足の構造的問題
- 専門技術習得に最低5年以上が必要
- 冬季限定の仕事による収入の不安定さ
- スキーヤーの減少
知識の断絶
- 暗黙知に依存した技術伝承
- 体系化されていない経験則
- 地域固有の知識の消失
変化への対応の遅れ
- 新しい雪崩パターンへの対応方法が未確立
- AI・IoT技術の導入の遅れ
- 国際的な知見交流の不足
このままでは何が起きるか
【タイムライン図】
2025年
現在の専門家が現役
↓
2035年
半数が引退、技術の空洞化始まる
↓
2040年
地域での雪崩管理が困難に
↓
結果
防災体制の崩壊、地域の孤立化
3つの課題は、実は1つにつながっている
統合的アプローチの必要性
これらの課題は独立した問題ではありません。
水資源不足 ←→ 雪崩リスク ←→ 技術継承
↘ ↓ ↙
気候変動への適応力低下
だからこそ、私たちは統合的な解決策を提案します。
- 雪崩を水資源として活用 → 水不足の解決
- AIによる予測システム → 新たなリスクへの対応
- データと技術の共有 → 次世代への継承
私たちの挑戦
これらの社会課題に対し、一般社団法人アルプス雪崩研究所は、
従来の「防災」の枠を超えた「資源管理」という新たなパラダイムで挑みます。
雪崩は災害ではなく、管理可能な資源である。
この発想の転換が、雪国の未来を切り拓く鍵となります。