ケンブリッジ大学を中心とする国際研究チームが、ギリシャの主要10山域を対象に1984〜2025年(41年間)の日次積雪マップを再構築し、積雪面積が約58%減少したことを報告した。NASAとESAの衛星データを機械学習で統合した「SnowMapper」ツールを独自開発し、解像度100mの高精度データを実現。減少の主要因は降水量の変化ではなく、気温上昇により高標高でも降水が雨に変わっていることと結論づけている。
SnowMapperによる41年間の再構築
研究チームが開発した「SnowMapper」は、NASA・ESAの衛星画像から雲・影のギャップを機械学習で補完し、日次・100m解像度の積雪マップを生成するツールである。オリンポス山をはじめとするギリシャの主要10山域に適用した結果、以下のことが判明した。
| 指標 | 内容 |
|---|---|
| 対象期間 | 1984〜2025年(41年) |
| 積雪面積の変化 | 約58%減少 |
| 減少加速 | 2000年以降に顕著 |
| 雪期間の変化 | 開始が遅れ、終わりが早まる「雪期の縮小」 |
| 主要因 | 気温上昇(降水量の変化ではない) |
「雨は減っていない。雪が雨になっている」
この研究の核心は、よくある直感的な説明を修正する点にある。ギリシャの山岳で積雪が減った理由は「雨(降水)が少なくなったから」ではない。降水量はほぼ変わっていないが、気温が上昇したことで高い山でも雪ではなく雨として降っているというメカニズムである。
地中海性気候のギリシャでは、冬の降水の多くが高標高でかろうじて雪として降っていた。気温が上昇することで、そのぎりぎりのラインを越え、雪ではなく雨になる日が増えている。積雪量が減ることで、夏季の水源として機能してきた「天然の白いダム」の貯水能力が失われ、地中海周辺での夏季渇水耐性が悪化している。
山岳積雪が「水の銀行」である意味
山岳地帯の積雪は、単なる気象現象ではない。冬の間に蓄え、春から夏にかけてゆっくりと融かして下流へ送り出す「天然の貯水機能」を持つことから、しばしば「天然の白いダム」とも呼ばれる。
ギリシャの研究が明らかにしたのは、この機能が急速に失われているという現実である。積雪面積が58%減少するということは、貯水量がほぼ半減することを意味する。さらに、雪期間の縮小(開始が遅れ、終わりが早まる)によって、融雪のタイミングが農業・水力発電・飲料水の需要ピークとずれ始めている。
地中海地域ではすでに夏季渇水が頻発しており、ギリシャ、スペイン、イタリアなど南欧諸国で深刻化している。SnowMapperが示した41年間の変化は、その根本的な要因の一つを定量的に可視化した成果として、今後の山岳水資源管理に大きな意味を持つ。